会計処理

新リース会計基準で税務はどう変わる?法人税の取扱いと申告調整の実務を解説

更新日:2026.09.08

この記事は約 11 分で読めます。

新リース会計基準_税務への影響

新リース会計基準が適用されても、法人税の計算の仕組みそのものは従来どおりです。変わるのは会計処理のほうです。賃借料として費用処理してきたオペレーティング・リースについても、会計上は使用権資産と、将来支払うリース料の債務であるリース負債を貸借対照表に計上します。法人税では引き続き支払賃借料を損金、つまり税務上の費用として扱うため、会計の費用と税務の損金にズレが生じ、法人税申告書で毎期の申告調整が必要になります。申告調整とは、会計の利益と税務の所得のズレを申告書の上で足し引きする手続きです。

何がどうズレるのか、別表四と別表五(一)に何を書くのか、税効果会計はどうなるのか。国税庁が公表した令和7年度税制改正の資料と申告調整の設例をもとに、経理担当者が押さえるべき実務を順に整理します。会計側の変更点そのものは、新リース会計基準の対応ガイドで解説しています。

新リース会計基準の対応と変更点に関する記事はこちら

→ダウンロード:マンガでわかる!新リース会計基準とは

新リース会計基準の法人税への影響と税務の考え方

まず会計側で何が変わったかを押さえます。新リース会計基準、正式には企業会計基準第34号は2024年9月13日に公表されました。強制適用は2027年4月1日以後に開始する事業年度から、早期適用は2025年4月1日以後に開始する事業年度からです。借手はオペレーティング・リースとファイナンス・リースの区分をやめ、原則としてすべてのリースを対象に使用権資産とリース負債を貸借対照表へ載せます。

一方の法人税は、令和7年度、つまり2025年度の税制改正で会計基準の見直しに合わせた手当てが入りました。それでも税務の判定軸は従来のままです。税務では、リース契約を実質は資産を買ったのと同じとみて売買として扱うか、単に借りているだけとみて賃貸借として扱うかで処理が分かれます。所得金額がリース期間全体で増えるわけではなく、費用を認識する時期と科目が会計と税務で食い違う、というのがこの論点の正体です。

リースの会計と税務の取扱いの差異

ファイナンス・リースは会計でも税務でも資産計上と償却、オペレーティング・リースは会計だけが資産計上で税務は賃借料の損金算入です。国税庁が公表した令和7年度改正の概要では、借手の取扱いを次のように整理しています。

▼ 借手の会計と税務の取扱い1

リースの区分会計上の取扱い(新リース会計基準)税務上の取扱い(改正後)
所有権移転ファイナンス・リース区分を廃止し、原則すべてのリースで使用権資産とリース負債を計上。使用権資産の減価償却費と、リース負債の利息相当額を費用計上リース資産の売買があったものとして、自己所有の減価償却資産と同じ償却方法で償却
所有権移転外ファイナンス・リース同上リース資産の売買があったものとして、リース期間定額法で償却
オペレーティング・リース同上引き続き賃貸借取引として、支払賃借料の額を損金算入

ファイナンス・リースでも、会計の使用権資産の計上額と税務上のリース資産の取得価額や償却方法が一致するとは限らないため、契約によっては申告調整が要ります。それでもズレが大きく出るのはオペレーティング・リースの行です。会計では減価償却費と利息、税務では賃借料という別々の費目で同じ契約を捉えるため、本記事はこの行に絞って解説します。

リースの会計と税務が非連動である理由

会計と税務が連動しないのは、法人税法がリース取引を独自の定義で判定しているからです。そのため、会計基準が変わっても税務の判定の大枠は動きません。法人税法上のリース取引に当たるのは、次の2つを満たす取引です。この定義は法人税法第64条の2に置かれ、2025年4月1日現在の法令でも維持されています。

▼ 法人税法上のリース取引の2つの要件2

要件内容
中途解約ができないリース期間中の中途解約が禁止されている。または中途解約する場合に、残りの期間のリース料のおおむね全部を支払うことになっている
借手が利益を享受し費用も負担する借手がその資産から生じる経済的な利益を実質的に享受し、使用に伴う費用も実質的に負担する

この2つを満たすと税務では売買として扱い、満たさなければ賃貸借として扱います。売買として扱う場合は、所有権が移転するかどうかで償却方法が分かれます。

会計側は第34号で新たにリースの識別の定めが設けられ、契約書の名称に関わらず実態でリースを判定するようになりました。その結果、会計では使用権資産を計上するリースなのに、税務では上の2要件を満たさないため売買扱いにならず、賃貸借として賃借料を損金にする、という組み合わせが増えると考えられます。法人税法上のリース取引に当たるかどうか、当たる場合に所有権移転外リース取引かどうかの判定は、新基準を適用した後も契約ごとに続ける必要があります。判定基準のうち購入オプションに関する一部見直しは次の章で触れます。

マンガでわかる!新リース会計基準強制適用企業の実務担当者が最初にやるべき取り組みとは?

新リース会計基準に対応した令和7年度税制改正のポイント

令和7年度税制改正のうち借手の実務に関わるのは3点です。加えて、それぞれの適用時期が会計の適用時期と別に動く点を押さえます。

▼ 令和7年度税制改正で借手に関わる3つのポイント

改正のポイント内容
1 オペレーティング・リースの賃借料債務の確定した部分を損金に算入することを法人税法第53条で明文化
2 リース期間定額法残価保証額を差し引かず、1円まで償却できるよう見直し。経過措置の届出あり
3 判定基準と少額リース所有権移転外の判定要件の一部見直しと、少額リースの費用処理の手当て

賃貸借処理の税務では債務確定分の賃借料を損金に算入する

税務上、賃貸借取引として処理するオペレーティング・リースで資産を借りた法人は、契約した事業年度以後の各事業年度において、その契約で支払うと定められた金額のうち債務の確定した部分を損金に算入します。債務の確定した部分とは、支払義務が具体的に固まった分のことです。法人税法第53条として新設された規定で、適用は2025年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税からです。会計で新基準を適用しているかどうかにかかわらず、この扱いは既に始まっています。

損金になるのは債務の確定した部分だけです。一定期間の賃料が無料になるフリーレントや前払いのリース料がある契約では、損金になる額が単純な月割りにならず、会計の費用とのズレも契約ごとに異なります。こうした契約は個別に税理士へ確認したうえで、契約単位の管理表に条件を残しておくと申告時の判断が速くなります。

所有権移転外ファイナンス・リースの税務はリース期間定額法を見直して経過措置を設ける

所有権移転外リース取引のリース資産は、税務上リース期間定額法で償却します。改正前は取得価額から残価保証額を差し引いて償却限度額を計算していました。残価保証額とは、リース終了時の資産の処分価額が契約で定めた保証額に満たない場合に借手が不足分を支払うこととされているときの、その保証額を指します。改正後は残価保証額を差し引かず、リース期間が経過した時点で帳簿に資産を残すための名目上の額である1円まで償却できます。対象は2027年4月1日以後に締結された契約です。

▼ リース期間定額法の見直し1

項目改正前改正後
償却限度額の計算式(取得価額−残価保証額)×当期のリース期間の月数÷リース期間の月数取得価額×当期のリース期間の月数÷リース期間の月数
リース期間終了時の未償却残額残価保証額相当額が残る1円の備忘価額まで償却できる
適用対象2027年4月1日以後に締結した所有権移転外リース取引の契約

2027年3月31日以前に契約した所有権移転外リース資産のうち、取得価額に残価保証額相当額が含まれているものは経過リース資産と呼ばれます。経過リース期間定額法を選べるのは、この経過リース資産について2025年4月1日以後に開始する事業年度からです。ただし、採用を始められる事業年度は、2027年3月31日後最初に開始する事業年度までに限られます。この経過措置を使うには、採用する事業年度の確定申告書の提出期限までに届出書を所轄税務署長へ提出しなければなりません。対象資産の一部だけを選ぶことはできず、いずれかの経過リース資産について経過リース期間定額法を選定しない場合は適用できません。届出を出し忘れると旧方式のまま残るので、残価保証付きの既存契約がある企業は契約台帳で該当資産を先に拾い出しておくのが安全です。

判定基準と少額リースの費用処理を手当てする

3つ目のポイントは、細かな手当て2点です。1点目は、税務上の所有権移転外リース取引の判定基準のうち購入オプションに関する要件の見直しです。買い取る権利が与えられており、かつ著しく有利な価額であることその他の事情により権利の行使が確実と認められるもの、という要件に改められました。この要件に当たる契約は所有権移転外リース取引に該当しません。2025年4月1日以後に締結する契約に適用されます。2点目は少額リースの費用処理です。重要性の乏しいリースについて、会計でどの科目に計上しても税務の償却費として扱えるよう、賃借料以外の費目で損金経理した金額も償却費として損金経理をした金額に含めることとされました。会計で重要性の乏しいリースを定額法で費用計上できるようになったことを踏まえた手当てです。

適用時期を会計と税務の3つの軸で整理する

適用時期は会計と税務で軸が3つに分かれます。会計の新基準は2027年4月1日以後に開始する事業年度が起点です。法人税法第53条は2025年4月1日以後に開始する事業年度から、リース期間定額法の見直しは2027年4月1日以後に締結する契約から適用されます。新基準の適用がまだ先でも、税務の改正は既に自社の事業年度に入っている、という状態は珍しくありません。

▼ 新リース会計基準と税務の適用時期は3つの軸で動く1

新リース会計基準の適用時期と法人税法第53条・リース期間定額法の見直しの適用時期を3本のレーンで比較したタイムライン図

実務で決め手になるのは契約の締結日です。会計は事業年度、法人税法第53条も事業年度で起点を判定しますが、リース期間定額法の見直しと判定基準の見直しは契約の締結日で切り替わります。契約台帳に締結日が入っていないと、同じ事業年度の中で新旧どちらの計算式を使うかを判断できません。

TOKIUM契約管理のご案内

新リース会計基準でリースの会計と税務に差異が出る3つの項目と例外

差異が出る項目は3つあります。費用の科目と金額、貸借対照表の資産と負債、リース期間の捉え方です。どれも同じ契約を別の物差しで見ることから生じます。例外として免除規定があります。免除規定とは、短期や少額のリースについて、使用権資産を計上せず従来どおり賃借料で処理してよいとする会計側の例外で、これを使った契約のうち税務上も賃貸借取引に当たるものでは原則としてズレが生じません。

▼ 会計と税務がズレる3つの項目と例外

項目会計(新リース会計基準)税務(法人税)
費用の科目と金額使用権資産の減価償却費と、リース負債にかかる利息相当額。利息は残高が減るにつれて少なくなる支払賃借料のうち債務の確定した部分。原則として契約どおりの金額
貸借対照表使用権資産とリース負債を計上するオペレーティング・リースは資産も負債も計上しない
リース期間解約不能期間に延長オプション等の行使可能性を加味して見積もる原則として契約で定めた期間をもとに扱う
例外 免除規定短期リースや少額リースは簡便的に賃借料として費用処理できる税務上も賃貸借取引に当たる契約なら、会計で賃借料処理していれば損金と一致し、差異は生じない

費用の項目で押さえたいのは、リース期間全体の合計額は原則として会計も税務も同じという点です。ズレるのは各年度への配分であって、初年度は会計の費用が大きく、最終年度に近づくほど税務の損金のほうが大きくなります。利息が残高に応じて減っていくため、申告調整の金額は年ごとに変わり、向きも途中で加算から減算へ変わります。

リース期間の捉え方は見落としやすい項目です。会計は延長オプションの行使可能性まで見積もるので、契約期間が3年でも会計上のリース期間が5年になることがあります。税務は原則として契約で定めた期間をもとに扱うため、同じ契約で期間が二重に存在します。免除規定はズレを生む側ではなく消す側の項目です。税務上も賃貸借取引に当たる短期リースや少額リースを会計でも賃借料として処理していれば、税務と一致するので原則として調整は生じません。使用権資産とリース負債の計算方法は別の記事で解説しています。

使用権資産の計算方法に関する記事はこちら

マンガでわかる!新リース会計基準強制適用企業の実務担当者が最初にやるべき取り組みとは?

オペレーティング・リースの別表調整と記載例

別表四は会計の利益から税務の所得を計算する表、別表五(一)はそのズレの残高を翌期へ持ち越す表です。この2つの表で行う申告調整を、以下では別表調整と呼びます。国税庁が2025年6月に公表した設例では、会計上の減価償却費と支払利息を別表四で加算し、税務上の賃借料を減算する形で申告調整を行っています。差額は利益積立金額の増減として別表五(一)で翌期に繰り越します。設例は一例として示されたもので、以下の数値はすべてその設例に基づいています。

▼ 国税庁の設例の前提3

設例の前提内容
契約の区分会計上はリースを含む契約、税務上の区分はオペレーティング・リース取引
リース開始日とリース期間X1年4月1日から5年(耐用年数5年)
リース料月額1,000千円、5年間の合計60,000千円、毎月末払い
割引率借手の追加借入利子率 年8%。将来払うリース料を今の価値に直すための利率
使用権資産とリース負債の計上額60,000千円を年8%で現在価値に割り引いた49,318千円
減価償却定額法、決算日は3月31日

この設例は、国税庁サイトの法人税の申告手続きの案内ページに掲載されています。税理士と共有する際は原本を参照してください。 3

設例を読むときのコツは、会計の仕訳を税務の姿に直すための仮の仕訳を頭に置くことです。国税庁の設例ではこれを訂正仕訳と呼んでいます。会計では使用権資産とリース負債を両建てして減価償却費と支払利息を計上しますが、税務ではその両建てをなかったことにして賃借料だけを損金にします。この差を所得計算に反映させるのが別表四、貸借対照表の科目のズレを残高として持ち越すのが別表五(一)という役割分担です。

▼ オペレーティング・リースの申告調整の流れ3

オペレーティング・リースの会計処理と法人税の取扱いの差を別表四と別表五(一)で申告調整する流れを示した図

初年度の別表調整で加算と減算を計算する

国税庁の設例では、初年度は会計の費用が税務の損金を1,508千円上回ります。会計上の利益はその分だけ税務上の所得より小さいので、差額を所得に足し戻すのが加算です。会計では減価償却費9,864千円と支払利息3,644千円の合計13,508千円を費用にしますが、税務で損金になるのは賃借料12,000千円だけだからです。別表四の記載は次のようになります。

▼ 初年度(X1期)の別表四3

別表四の区分項目金額(千円)処分
加算支払利息否認3,644留保
加算減価償却費否認9,864留保
減算賃貸借取引に係る費用の損金算入額12,000留保
差引所得金額への影響+1,508

処分欄の留保は、いずれ解消するズレとして別表五(一)に引き継ぐ区分です。別表四の差引額1,508千円は、加算13,508千円から減算12,000千円を引いた純額です。別表五(一)には、期末の貸借対照表に計上された科目を税務上の姿に合わせる形で残高を記載します。設例ではリース負債プラス40,962千円、使用権資産マイナス49,318千円、減価償却累計額プラス9,864千円の3行が並びます。差引は40,962から49,318を引いて9,864を足した1,508千円です。

▼ 初年度(X1期)の別表五(一)の動き(千円)3

別表五(一)の区分期首現在当期の減当期の増差引翌期首
リース負債08,35649,31840,962
使用権資産0△49,318△49,318
減価償却累計額09,8649,864
差引合計額08,3569,8641,508

検算のポイントは、別表五(一)の期首残高に当期の別表四の差引額を足した額が期末残高と一致することです。初年度は期首がゼロなので、結果として別表四の差引額1,508千円と別表五(一)の差引合計が同じ数字になります。2年目以降は期首残高が積み上がるため、別表四の単年度の額とは一致しません。

2年目以降の差異を追いかけて最終年度で解消する

2年目以降は加算額が毎年減り、リース期間の後半には減算に転じます。支払利息がリース負債の残高に応じて減っていく一方で、税務の賃借料は毎年12,000千円で一定だからです。設例では2年目の加算が814千円、最終年度の5年目は1,632千円の減算になり、5年間の加算と減算を合計するとゼロに戻ります。2年目末の別表五(一)の差引合計は、期首の1,508千円に当期の814千円を足した2,322千円です。

▼ 申告調整額は毎年変わりリース終了で解消する3

オペレーティング・リースの申告調整額が初年度の加算から最終年度の減算へ推移し5年間で相殺されることを示す図

実務では、この推移を契約ごとに5年分追いかけることになります。前期末の別表五(一)の残高を当期の期首に引き継ぎ、当期の会計費用と賃借料の差額を別表四に反映し、期末残高を翌期へ回します。契約が1件なら手計算でも回りますが、店舗や拠点ごとに契約がある企業では契約単位の管理表がないと差異の出どころを追えなくなります。リース料の改定や中途解約が入ると再計算も必要です。

申告調整が不要になるケースを確認する

税務上も賃貸借取引に当たる契約を会計上も賃借料として費用処理している場合は、会計の費用と税務の損金が一致するため申告調整は生じません。短期リースや少額リースに簡便的な取扱いを選んだ契約の多くがこれにあたります。監査対象法人以外の法人、たとえば中小企業は、中小企業の会計に関する指針や基本要領に則った会計処理をそのまま使えます。新基準を適用しない限り、税務の実務も従来のままです。

注意したいのは、免除規定の判定そのものは会計基準の話だという点です。どの契約を短期リースや少額リースとして賃借料処理できるかは第34号と適用指針第33号で決まり、税務はその結果を受けて損金と一致するかどうかを見るにすぎません。中小企業の適用範囲については別記事で整理しています。

新リース会計基準の中小企業への影響に関する記事はこちら

TOKIUM契約管理のご案内

新リース会計基準によるリースの税効果への影響

オペレーティング・リースでは、使用権資産もリース負債も税務上は存在しません。ここから一時差異が生まれ、繰延税金資産や繰延税金負債の計上が必要になります。税効果会計は、会計の利益と税務の所得のズレのうち、いずれ解消するものを一時差異として捉え、税金の前払いや後払いとして貸借対照表に載せる仕組みです。前払いに当たるものが繰延税金資産、後払いに当たるものが繰延税金負債です。使用権資産は会計の帳簿上の金額が税務の金額を上回るため将来加算一時差異に、リース負債は会計の負債が税務では認識されないため将来減算一時差異になります。

設例の初年度末で見ると、会計上の使用権資産は49,318千円から減価償却累計額9,864千円を引いた39,454千円、リース負債は40,962千円です。リース負債40,962千円から使用権資産39,454千円を引いた1,508千円が、別表四の差引額と一致します。別表四の調整額は当期の所得計算に使い、税効果の一時差異は期末残高に税率を掛けて将来の税金を見積もるのに使います。同じ数字から出発しても作る表と目的が違うので、別の作業として管理したほうが整理しやすいでしょう。使用権資産とリース負債の一時差異は別々に把握し、別表五(一)の残高と突き合わせておきます。解消のスケジュールは、設例でいえば別表五(一)の5年間の推移そのものです。繰延税金資産を回収できるかどうかの判断は企業ごとの状況によるため、監査法人と早めにすり合わせておく事項です。

マンガでわかる!新リース会計基準強制適用企業の実務担当者が最初にやるべき取り組みとは?

消費税・事業税・償却資産税は新リース会計基準で変わるか

消費税と地方税の取扱いは、会計基準の変更によって直接変わるものではありません。いずれも税法側の定義で判定するため、会計で使用権資産を計上したかどうかは判定に影響しないからです。

消費税の仕入税額控除、つまり支払った消費税を差し引く仕組みは、法人税法上のリース取引に当たるかどうかで判定します。法人税法上売買があったものとされるリース取引は、原則としてリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間でまとめて控除の対象になります。契約でリース料のうち利子相当部分が区分表示されている場合、その部分は非課税です。オペレーティング・リースは賃貸借として、資産の貸付けを受けた期間に対応する賃借料をその支払期日の属する課税期間で控除する扱いが続きます。控除のタイミングや請求書の保存要件まで含めた各論は、リースの消費税を扱った記事に譲ります。

リースの消費税に関する記事はこちら

原則として資本金1億円超の法人に課される法人事業税の外形標準課税では、人件費や賃借料などをもとに計算する付加価値割に、土地や家屋の純支払賃借料が含まれます。新基準で不動産賃貸借の費用が減価償却費と支払利息に組み替えられても、付加価値割の算定では従来どおり支払賃借料として扱う解説が税理士法人などから示されています。これまで地代家賃などの勘定科目から支払賃借料を集計していた企業は、科目が変わることで集計から漏れないよう注意が必要です。償却資産税の申告義務は資産の所有者にあるため、借手の会計処理によって申告の要否が変わるものではないと解されています。いずれも地方税の細部は自治体や税理士に確認したうえで運用してください。

自社の資産をいったん売却してそのまま借り直すセールアンドリースバックは、売買と賃貸借が組み合わさるため、消費税を含む税務上の判定が独立した論点になります。売買ではなく資金の貸し借りとみなされるリスクも含め、別の記事で扱っています。

セールアンドリースバックの会計処理と税務に関する記事はこちら

TOKIUM契約管理のご案内

リースの税務申告の実務で経理が準備すべきこと

準備の中心は2つです。契約ごとに税務の判断材料を持つこと、そして会計の台帳と税務の台帳をつないで毎期回せる体制を作ることです。申告調整は契約単位で発生し、リース期間中ずっと続きます。契約が各部門に散らばったままでは、初年度の計算はできても2年目以降の引き継ぎが止まります。

契約ごとに管理する税務項目を決める

契約ごとに持っておきたい税務項目は次の10項目です。会計の台帳に載っている項目と重なるものもありますが、税務の判定に使う切り口で整理し直しておくと申告時に迷いません。契約書から拾える項目と、その情報をもとに会計側や税務側で判定や管理をする項目に分かれます。

▼ 契約ごとに管理しておきたい税務項目

管理項目どこから拾うかなぜ必要か
契約の締結日とリース開始日契約書締結日は2025年4月1日と2027年4月1日の前後で判定基準やリース期間定額法の計算式が切り替わる。開始日は会計の起点になる
契約期間と会計上のリース期間契約書と会計台帳延長オプションの見積りで会計と税務の期間がずれると、費用と損金の配分が変わる
月額と支払スケジュール契約書債務の確定した部分の把握に使う。フリーレントや前払いがある契約は個別に記録する
残価保証額の有無契約書経過リース資産に当たるかどうかと、経過措置の届出の要否を判定する
利息相当額の区分表示の有無契約書消費税で利子相当部分を非課税にできるかどうかの判定に使う
土地や家屋の賃借かどうか契約書外形標準課税の付加価値割で支払賃借料に含める契約を集計する
税務上の区分税務側で判定法人税法上のリース取引かどうか、所有権移転外リース取引かどうかで損金の計算方法が変わる
免除規定の適用有無会計側で判定短期リースや少額リースとして賃借料処理した契約は申告調整の対象外として区別する
別表五(一)の期末残高税務側で管理翌期の期首残高として引き継ぐ。契約ごとに持たないと差異の出どころを追えない
会計台帳との対応関係会計台帳と税務側使用権資産やリース負債のIDと税務側の契約を紐づけ、再計算やリース料改定の際に両方を更新する

10項目に共通する前提は、対象となる契約が漏れなく手元にあることです。不動産賃貸借やサービス契約の中にリースを含む契約が紛れていると、会計の判定だけでなく税務の区分判定も抜け落ちます。名前はリースでないのに実態はリースに当たる契約、いわゆる隠れリースの洗い出しについては別記事で解説しています。

隠れリースの洗い出しに関する記事はこちら

会計台帳と税務台帳をつなぐ体制を整える

会計の台帳と税務の管理表を別々に作らない。体制づくりの要はこの一点です。使用権資産の計算に使った契約情報から、税務の区分と債務確定額を同じ契約IDで参照できるようにしておけば、毎期の申告調整は差額の集計と別表への転記が中心になります。

▼ 契約台帳を起点に会計と税務を毎期回す運用フロー

契約台帳を起点に会計処理と税務処理を並行して進め、差異を別表四と別表五(一)で申告調整して翌期へ引き継ぐ運用フロー図

台帳と並行して、社外と決めておく事項もあります。上場企業の子会社であれば、早期適用の可否や免除規定の範囲、割引率やリース期間の見積り方針は親会社の連結方針で決まることが多いので、まずそれを確認します。そのうえで税理士とは、税務上の区分の判定ルール、経過措置の届出、適用初年度の別表五(一)の期首残高の立て方を詰めておきます。いずれも申告書の作成段階では手遅れになりやすいため、四半期決算がある企業は適用初年度の期首までに固めておくのが目安です。

▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます

新リース会計基準の税務対応は契約情報の整理から始める

新リース会計基準で税務が変わるのではなく、会計が変わることで税務との差が生まれます。この記事で押さえたのはその一点と、差を毎期どう扱うかの実務です。法人税ではオペレーティング・リースの賃借料を債務確定分で損金にし、会計の減価償却費と支払利息との差を別表四で加算減算し、別表五(一)で残高を繰り越します。差異はリース期間の終了時にゼロへ戻るため、必要なのは所得への影響の心配よりも契約ごとに追い続ける仕組みです。

その仕組みの出発点は、社内に散らばった契約書を集め、どの契約がリースに当たるかを判定し、締結日や契約期間、金額などの契約条件を契約単位でデータ化しておくことです。前の章で挙げた管理項目のうち、契約書から拾う項目はここまでの工程で揃います。税務上の区分の判定や別表の残高の管理は、その情報をもとに税理士や申告システムの側で行う、その先の工程です。契約書の集約と判定の部分は、TOKIUM契約管理のようなクラウドの契約管理サービスで負担を減らせます。TOKIUM契約管理では紙の契約書のスキャンと原本保管に標準サービスとして対応し、AIが契約書を読み取って新リース会計基準のリースに該当する可能性を判定根拠とともに表示する仕組みです。契約期間や契約金額といった項目の抽出にも対応し、判定結果は根拠条文付きのCSV形式で出力できます。

業務用食品卸売の株式会社トーホーでは、グループ16社・1万件以上の契約書を対象に、TOKIUMのAIリース判定サービス「TOKIUM AI新リース判定」を導入し、紙の契約書の電子化とAIによるリース判定で、過去分契約書の判定作業の大幅な工数削減を見込んでいます。 4

▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます

申告調整や別表の作成そのものは税理士や申告システムの領域です。その手前にある契約の集約と判定が整っていれば、毎期の申告調整は差額の集計と転記の作業に近づきます。新リース会計基準への対応を契約の整理から進めたい方は、TOKIUM契約管理の資料をご覧ください。

TOKIUM契約管理のご案内

新リース会計基準の税務に関するよくある質問

早期適用した場合、税務の扱いはいつから変わりますか

早期適用しても法人税の扱いは変わらず、申告調整が早く始まるだけです。法人税法第53条は2025年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。同じ年度から新基準を早期適用した企業は、その年度からオペレーティング・リースの申告調整と税効果会計の対応が必要になります。

貸手であるリース会社の税務は変わりますか

変わります。貸手がリース料を分割で収益計上できる特例、いわゆる延払基準の特例が廃止されました。新基準で割賦基準による処理が認められなくなったことに対応した改正です。一定の経過措置があり、未計上の収益と費用を一括計上する事業年度で収益額が費用額を超える場合には、申告書への記載を要件として5年均等で計上できる措置も設けられています。本記事は借手向けのため詳細は割愛しますが、貸手の会社はこの改正を別途確認してください。

リース料の改定や中途解約があった場合の申告調整はどうなりますか

別表四の加算減算額と別表五(一)の残高を再計算する必要があります。会計上はリース負債と使用権資産を見直すため、その後の減価償却費と支払利息が変わり、税務の賃借料との差額も変わるからです。解約時には会計上の使用権資産とリース負債の消滅に合わせて残高を精算します。国税庁の設例は改定や解約を扱っていないため、個別の契約は税理士に確認してください。

適用初年度に既存の契約を期首で計上した場合の別表はどうなりますか

国税庁の設例はリース開始日から計上を始める例なので、既存契約を適用初年度の期首に一斉計上する場合は設例の範囲外です。会計上の期首の計上額と税務上の残高の差異を別表五(一)の期首に反映する必要があり、その立て方は遡及適用か簡便的な方法かで変わります。適用方法を決めた段階で、税理士と別表五(一)の期首残高の設計を詰めてください。

中小企業のリースの税務は新リース会計基準で変わりますか

監査対象法人以外の中小企業は、中小企業の会計に関する指針や基本要領に則った会計処理を続けられるため、新基準を適用しない限り本記事の申告調整は生じません。ただし法人税法第53条やリース期間定額法の見直しは会計基準の適用有無にかかわらず適用されるため、所有権移転外リース資産の償却計算などは改正後の取扱いで行います。任意で新基準を適用した場合は、本記事の申告調整が同じように必要になります。

所有権移転外ファイナンス・リースの税務は新リース会計基準で変わりますか

税務上の扱いは売買のままで、リース資産をリース期間定額法で償却する点は変わりません。主な変更は、2027年4月1日以後に締結した契約について残価保証額を差し引かずに1円まで償却できるようになった点です。あわせて、判定基準のうち購入オプションの要件が2025年4月1日以後の契約から見直され、残価保証付きの既存契約には届出による経過措置があります。ファイナンス・リースでも会計と税務の計上額が一致しない契約は申告調整の対象になります。

新リース会計基準で法人税の負担額は増えますか

リース期間全体で見た所得金額は変わりません。会計の費用と税務の損金は期間の配分が違うだけで合計は原則として一致し、申告調整もリース期間の終了時に解消します。増えるのは所得ではなく、契約ごとに差異を追いかける管理の手間です。

▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます

  1. 出典:国税庁「令和7年度 法人税関係法令の改正の概要」(最終確認日:2026年9月8日) ↩︎
  2. 出典:国税庁タックスアンサーNo.5702「リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)」(最終確認日:2026年9月8日) ↩︎
  3. 出典:国税庁「オペレーティング・リース取引に係る借手の申告調整について」(令和7年6月)(最終確認日:2026年9月8日) ↩︎
  4. 出典:株式会社TOKIUM「業務用食品卸売のトーホー、グループ16社にTOKIUM AI新リース判定を導入」(2026年6月19日)(最終確認日:2026年9月8日) ↩︎
DOCUMENT
もっと役立つ情報を
知りたい方はこちら
TOKIUM契約管理
新リース会計基準対応の「TOKIUM契約管理」サービス紹介資料
支出管理プラットフォームTOKIUM「導入事例集」
経理AIエージェント「TOKIUM」導入事例集

関連記事