この記事は約 6 分で読めます。
リース台帳をエクセルで管理していて限界が来るのは、契約件数が増えたときではありません。契約の中身が動いたときです。リース期間が延びた。賃料が改定された。拠点が1つ増えた。そのたびに台帳を直し、計算式を組み直し、どのファイルが最新かを確かめる作業が発生します。
新リース会計基準の適用が始まるのは、2027年4月1日以後に始まる連結会計年度と事業年度の期首からです1。2025年4月1日以後に始まる年度から早期に適用することもできます。借手は原則としてすべてのリースについて資産と負債を計上することになり、台帳に持たせる情報も、更新の頻度も変わります。エクセルが耐えられなくなるのは、この「更新し続ける」性質を持ち込んだときです。
この記事では、エクセルで回せる範囲と行き詰まる場面を、実務が進む順に整理します。
リース台帳のエクセル管理と、新リース会計基準で変わること
エクセルのリース台帳は、物件と契約期間と支払を管理する道具としては十分に機能します。新しい基準で変わるのは、そこに会計処理と監査説明のための情報が乗ることです。なお、ここで扱うのはリースを借りる側が自社の契約を管理する話です。リース会社が貸し出した物件を管理する台帳とは、必要な項目も更新の頻度も違います。
エクセルのリース台帳でできていること
多くの会社のリース台帳は、物件情報、契約情報、支払情報、期限管理の4つで構成されています。物件名と管理番号、リース会社と管理部署、開始日と終了日、月額と総額、引落口座と再契約の要否。終了日が近づいた行に色が付くようTODAY関数を仕込んでおけば、更新漏れもある程度は防げます。契約が少なく、内容が動かないうちは、この作り方で足ります。
新リース会計基準で台帳に増える情報
新しい基準では、借手が結んだリースは原則としてすべて、使用権資産とリース負債として貸借対照表に載ります1。台帳が抱える情報は、管理のための項目から、計算のための項目へ広がります。契約がリースに当たるかの判定結果と、その判断をした理由。延長や解約のオプションをどう見積もったか。リース料の範囲と、割引率をどう決めたか。少額リースや短期リースの例外を使ったかどうか。どれも、後から監査法人に説明を求められる情報です。
増えるのは列だけではありません。対象になる契約の数も増えます。これまで賃借料として費用処理していたオフィスや店舗の賃貸借、車両、サーバーやコピー機の契約が、資産と負債を計上する対象に入ってきます。台帳の行数が数倍になった状態で、上の情報を1件ずつ埋めていく。これが初年度の作業量です。
●新リース会計基準の変更点と実務対応に関する記事はこちら
リース台帳をエクセルで作るときに必要な項目
台帳の項目は、管理のために持つものと、会計処理と監査説明のために持つものに分かれます。多くの会社がつまずくのは後者です。
物件と契約と支払の基本項目
まず、物件を特定して支払を追うための項目です。管理番号、物件名、リース会社、管理部署、設置場所、リース期間の開始日と終了日、月額リース料と総額、支払回数、引落口座、再契約の要否。ここは既存の台帳でもたいてい埋まっています。問題は、この列だけでは会計処理に進めないことです。
判定と計算に使う項目
新しい基準で追加になるのは、判断の中身を残す列です。契約がリースに該当すると判断した理由と、リースを構成しない部分があるかどうか。解約不能期間と、延長や解約のオプションの対象期間、そのオプションを行使すると見込んだ根拠。固定リース料と変動リース料の区別、割引率とその決定根拠、少額リースや短期リースの例外の適用有無。数字だけでなく、文章で残す欄が必要になります。
▼ リース台帳に持たせる項目を目的別に整理したもの
| 何のための項目か | 台帳に持たせるもの | どこを見て埋めるか |
|---|---|---|
| 物件を特定する | 管理番号、物件名、設置場所、管理部署 | 契約書と現物、管理部署への確認 |
| 支払を追う | リース期間、月額リース料、総額、支払回数、引落口座 | 契約書と支払明細 |
| リースかどうかを判定する | 判定結果、判定した理由、リースを構成しない部分の有無 | 契約書の条文 |
| リース期間を見積もる | 解約不能期間、延長・解約オプションの対象期間、行使を見込んだ根拠 | 契約書の条文と社内の使用計画 |
| 負債と資産を測定する | 固定・変動リース料の区別、残価保証、割引率と決定根拠 | 契約書と社内の資金調達条件 |
| 例外を管理する | 少額リース・短期リースの適用有無と適用単位 | 社内で決めた基準額と契約書 |
| 変更を追う | 改定の発効日、改定後の条件、改定前の条件 | 覚書と変更契約書 |
テンプレートをそのまま使うと足りなくなる項目
無料で配布されているリース管理台帳のテンプレートは、物件と支払を管理する目的で作られています。判定した理由を書く欄も、割引率の決定根拠を書く欄も、改定の履歴を残す欄もありません。ダウンロードして使い始めた台帳が、決算のタイミングで作り直しになるのはこのためです。テンプレートを使うなら、上の表の下3行にあたる列を最初から足しておくと、後の手戻りが減ります。
リース台帳のエクセル管理が破綻する3つの場面
エクセルが行き詰まるのは、台帳をつくるとき、計算するとき、契約が動いたときの3つです。順番に見ていきます。

場面1 契約書が各部署とグループ会社に散っている
台帳は、対象になる契約を全部そろえないと作れません。ところが契約書は経理の手元にありません。オフィスの賃貸借契約は総務、店舗の契約は店舗開発、サーバーやコピー機の契約は情報システム、車両は各拠点、そして子会社の契約は子会社の中にあります。経理が最初にやる作業は、会計処理ではなく、契約書を集めて回ることです。
TOKIUMが2024年11月に、新リース会計基準の対象企業で経理・財務を担当する1,048人に聞いた調査があります。適用後の業務に不安を感じる人は80.4%。そのうち該当する契約書を正確に識別できるかを不安に挙げた人が69.6%でした3。契約書が適切に管理できていないと答えた人が挙げた理由は2つでした。紙と電子の契約書が混在して必要な書類が見つけにくいこと(47.4%)。そして、契約書管理のルールや手順が整備されていないこと(39.4%)です。台帳が作れないのは、エクセルの性能の問題ではありません。
●リース契約の洗い出し方法に関する記事はこちら
場面2 現在価値と利息法の計算式が属人化する
リース料の現在価値を割り引き、支払額を元本と利息に分ける利息法で毎期の費用を配分し、使用権資産を償却します。この計算はエクセルでも組めます。組めますが、組んだ人の頭の中にしか設計が残りません。関数がネストし、シート間の参照が増え、途中でマクロが挟まる。半年後には作った本人でも直せない表になります。
同じ調査で、Excelや管理システムに入力する作業に不安を感じる人は37.7%でした。リースの識別や仕訳処理にかかる手間が増えることに不安を感じる人は51.1%です3。計算が難しいのではなく、その計算を5年後に誰が保守するのかが決まっていないところに問題があります。
●リース資産の減価償却の計算方法に関する記事はこちら
場面3 再測定と条件変更で版が増える
リース期間の見積りが変わったとき、賃料が改定されたとき、契約条件そのものが変わったとき。台帳は書き換えではなく、積み上げになります。改定前のスケジュールは監査のために残さなければならず、改定後のスケジュールは新しく作らなければならない。ファイルは「_最新」「_最新2」「_確定版」と増えていきます。
拠点が多い会社や、賃料改定の覚書が頻繁に出る会社では、この積み上げが毎期起きます。1年後に「この数字はどの覚書に基づくのか」と聞かれて答えられなくなるのが、エクセル運用の典型的な壊れ方です。
決算と監査で効いてくる
3つの場面のツケは、決算と監査でまとめて回ってきます。リース負債は残存期間に応じて流動と固定に分ける必要があり、注記のために全契約を横断で集計します。そして監査では、誰がいつ何を根拠に直したのかを聞かれます。誰でもセルを上書きできるエクセルは、この問いに答える証跡を持っていません。
●リースの内部統制と監査対応に関する記事はこちら
▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます
リース台帳のエクセル運用を続けられる範囲と、見直しを考えるサイン
続けるか見直すかは、契約件数だけでは決まりません。見るべきは、契約がどれだけ動くか、契約書を持っている部署がいくつあるか、そして担当が何人いるかです。
エクセルで続けられる状態
対象になる契約が数えられる範囲に収まっていて、契約の中身がほとんど動かず、契約書の保管場所が経理の手の届く範囲に閉じている。この3つがそろっているなら、エクセルで十分に回せます。足りなくなるのは、3つのうちどれか1つが崩れたときです。
見直しを考えるサイン
件数を数える前に、次のような状態になっていないかを見てください。たとえば、月次の締めでリース関連にどれだけ時間がかかるかを前もって読めなくなっている。契約の変更が入るたびに、台帳の更新を誰に頼むかを毎回相談している。監査法人から根拠を求められたときに、契約書のファイルを探すところから始まっている。どれも件数とは関係なく起きる詰まり方です。
▼ エクセルを続けるか見直すかを判断する観点
| 見る観点 | エクセルで続けられる状態 | 見直しを考える状態 |
|---|---|---|
| 契約が動く頻度 | 改定や中途解約が年に数回 | 賃料改定や入退去の覚書が毎期出る |
| 契約書を持つ部署 | 経理と総務で完結する | 店舗開発や情報システム、子会社にも契約書がある |
| 契約条件の複雑さ | 固定の賃料だけで特殊条件がない | フリーレント、共益費込み、中途解約オプションが混ざる |
| 担当者の人数 | 専任が確保できている | 1人が兼務していて、交代の予定がある |
| 月次の作業時間 | 締めの中で読める時間に収まる | リース関連の作業時間が毎月読めない |
| 監査での説明 | 根拠を聞かれてもすぐ示せる | 誰がいつ直したかを台帳から示せない |
件数の目安をそのまま当てはめない
「契約が何件を超えたらシステム化」という数字をよく見かけますが、その根拠が示されていることはほとんどありません。契約が10件でも、毎月どこかで賃料改定が出る会社では台帳が追いつきません。逆に300件あっても、複数年動かない契約ばかりなら初年度を越えれば落ち着きます。件数ではなく、件数と変更頻度と部署の数を掛け合わせて見るのが実態に合います。
エクセルを続けると決めた場合にそろえる最低限の作り
予算や時期の都合で、当面はエクセルで進める判断もあります。その場合に守っておくと、あとで移行するときにも無駄になりません。
正本のファイルと編集権限を決める
台帳の正本を1ファイルに決めて、置き場所を1か所にします。次に、編集できる人を限定し、それ以外は閲覧だけにしてください。あわせて更新履歴を別シートに残しておきます。日付、更新した人、変更した契約、変更の理由。この4列があるだけで、監査で聞かれたときの答えが変わります。
契約書の原本と台帳をひもづける
台帳の1行から、元の契約書にたどり着けるようにします。契約書のファイル名と保管場所を台帳の列に持たせ、覚書は枝番で原契約とつなぎます。台帳と契約書が切れていると、再測定のときも監査のときも、探すところからやり直しになります。
判定と割引率の根拠を文章で残す
数字だけの台帳は、なぜその数字になったのかを説明できません。この契約をリースと判定した理由、延長オプションを行使すると見込んだ理由、割引率をどう決めたか。短くてかまわないので、文章で残します。1年後に担当が代わったとき、この列があるかどうかで引き継ぎの重さが変わります。
エクセルのリース台帳を見直すときの進め方
見直しは、システムを選ぶところから始まりません。契約書を集めるところから始まります。

ステップ1 契約書を集める
誰が何の契約書を持っているかを先に決めます。総務、店舗開発、情報システム、各拠点、そして子会社。依頼するときは、原本かPDFか、覚書も含めるか、いつまでに出すかを一度に伝えます。ここで集めきれなかった契約が、そのまま初年度の漏れになります。
回収する前に決めておくと後が楽なのは、受け取り方と保管場所です。紙で回収するのか、スキャンして渡してもらうのか。原本は誰が持ち続けるのか。覚書は原契約とどう束ねるのか。ここを決めないまま集め始めると、集まった契約書が今度は経理の机の上で散らかります。
ステップ2 リースに当たるかを判定し、根拠を残す
集めた契約を1件ずつ見て、リースに該当するかを判定します。このとき、判定した人と日付と理由を一緒に残してください。判定結果だけを台帳に書くと、監査で根拠を聞かれたときに契約書を読み直すことになります。
●リース識別のAIによる自動化に関する記事はこちら
▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます
ステップ3 台帳に落として会計処理と注記につなぐ
判定が済んだら、測定に使う項目を台帳の列に落とします。ここまでそろって、初めて仕訳と注記の作業に進めます。少額リースや短期リースの例外を使うなら、適用の単位も台帳に残しておきます。
●少額リースの判定基準に関する記事はこちら
【関連する無料マンガ】
▶マンガでわかる!新リース会計基準とは
※すぐにPDF資料をお受け取りいただけます
見直したあと、リース台帳の運用は誰がやるのか
初年度を乗り切るのと、毎期回し続けるのは別の話です。移行しても、更新する人が決まっていなければ、エクセル時代と同じ属人化が起きます。
毎期かならず発生する作業を押さえる
適用が始まったあと毎期発生するのは、新しく結んだ契約の取り込みと、リース期間の見積りや賃料改定の反映です。加えて、満了した契約と再リースの処理、注記のための全契約の集計、判定根拠の更新も毎期回ってきます。新リース会計基準の台帳は、一度作って終わりではなく、契約が続く限り更新し続けるものです。
担当者が代わっても回る形にする
引き継ぎ資料を厚くするより、仕組みに残すほうが確実です。リースと判定した根拠、割引率の決め方、そして契約書の在り処。この3つが台帳の中に残っていれば、担当が代わっても作業は続けられます。逆に、この3つが前任者の記憶の中にあるうちは、システムに移しても属人化は解けません。
契約管理と新リース判定を1つの基盤に置く
台帳が続かない原因をたどると、契約書が集まる場所と、判定をする場所と、台帳ができる場所が別々になっていることに行き当たります。TOKIUM契約管理は、この3つを1つのサービスの中で扱います。紙の契約書は郵送するだけでスキャンとデータ化、原本の保管までTOKIUMが引き受けます。AIが取引先名や契約期間、自動更新の有無、解約不能期間などを読み取り、管理台帳を自動で作成します。毎月1日には、更新の対応が迫っている契約の一覧が各担当者にメールで届きます5。
リースに該当する可能性のある契約はAIが判定し、判定の根拠にした条文が契約書の画面上でハイライトされます。AIの判定理由と該当条文を同じ画面で照らし合わせられるので、複数ページの契約書でも根拠箇所をすぐ特定できます6。監査で「なぜこの契約をリースと判定したのか」を聞かれたときに、示すものが最初から残っている状態になります。
グループ会社の契約書が散らばっている場合も同じ考え方で進められます。業務用食品卸売のトーホーでは、グループ全体で管理する契約書が1万件以上あり、1件ごとにリースに該当するかを判定する工数が課題でした。紙の契約書を郵送するだけでスキャンとデータ化、原本保管まで代行する形でグループ16社に導入し、過去分の契約書についても大幅な工数削減を見込んでいます7。リース台帳の作成と更新をどう回すか決めかねている方は、TOKIUM契約管理の資料をご覧ください。
▶AI新リース判定のサービス詳細はこちら
※すぐに資料をお受け取りいただけます
リース台帳の運用を立て直すならTOKIUM契約管理
エクセルのリース台帳が足りるのは、契約が動かないうちだけです。行き詰まるのは、台帳をつくるとき、計算するとき、契約が動いたときの3つの場面。当面続けるなら、正本の1ファイル化と、契約書と台帳のひもづけと、判定根拠の記録の3つを守ってください。見直すなら、システムを選ぶ前に契約書を集めるところから始めます。
そして、初年度を越えたあとに毎期誰が更新するのかを先に決めておくこと。これがいちばん効きます。契約書の回収から台帳の作成、更新期限の通知までを1つの基盤に置けば、担当が代わっても運用は続きます。TOKIUM契約管理の機能と導入の進め方は資料にまとめています。ぜひダウンロードしてご覧ください。
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」(2024年9月13日公表・PDF)(最終確認日:2026年9月16日) ↩︎
- TOKIUM「新リース会計基準に関する実態調査」(最終確認日:2026年9月16日) ↩︎
- TOKIUM契約管理 サービスページ(最終確認日:2026年9月16日) ↩︎
- TOKIUM「TOKIUM AI新リース判定、AI判定の根拠条文をハイライトする機能を追加」(最終確認日:2026年9月16日) ↩︎
- TOKIUM「業務用食品卸売のトーホー、グループ16社にTOKIUM AI新リース判定を導入」(最終確認日:2026年9月16日) ↩︎


